富里市中沢290
国道409号線を八街市に向かい、富里第一小学校前の坂を下りきった場所の信号を左折して直進すると、目の前に広がる一帯の林が富里市において唯一の、中世からの形を保ったまま残された中沢城址(通称は城山)です。
中沢城址は、室町時代後半に千葉氏の勢力下の一城として築城されたと考えられ、北総台地特有の自然地形である舌状台地(ぜつじょうだいち)の特徴をうまく利用しています。城というと大阪城や名古屋城など立派な城を想像しますが、室町時代の城は、城といっても天守閣や石積みの無いものでした。そこに居住した武士たちも半分は農民のようなものでした。
城という字が「土」と「成る」に分解できることからもわかるように、本来の城は土で作られた山城でした。
発掘調査が行われていないので、内部にどのような建物が建てられていたかは不明ですが、他の場所で調査された同時期の遺跡からは掘立小屋程度のものが数棟並んで発見されていることから、中沢城址も同様ではなかったかと推測されます。
城は自然地形を生かして築城されていることから、台地上の平坦な部分から敵が進入するのを防ぐために空堀が掘られており、掘り上げられた土は積み上げられ土塁(どるい)として機能しています。
土塁のある東側の空堀から南側を回り西に向かって虎口(こぐち)を通り、西の水田に下りることができます。こうすることによって、敵に見られずに下の水飲み場に行くことができます。
また、北側を曲がり西に向かう空堀は星曲輪(ほしくるわ)に通じ、その途中からは北側の平場と湧水池に通じています。平場は馬を置くところで、湧水池は馬の水飲み場でもあったと考えられます。
内部をよく観察してみると、土塁から西側に向かって段々畑のような段が存在しています。これらは曲輪(くるわ)と呼ばれ、建物が建てられていた部分と考えられます。また、舌状台地の先端部分でもある崖面には、三角形に整形された曲輪が整然と並び、上から見た形が星のように見えることから、星曲輪と呼ばれています。このような曲輪をもった城は極めて少なく、独特の構造を持った城として貴重な存在です。
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