令和8年度の中間点[令和8年10月21日]
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メッセージ
今年度の残りも半分となりましたね。学年初めに立てた目標の達成に向けて取り組んでいるところだと思います。進捗状況(しんちょくじょうきょう:進み具合のこと)はいかがですか?夏休み前の本欄で紹介したサブゴールの考え方や進捗モニタリングで、自己評価してみてはどうでしょう。
今年度は夏休みの後半から天候がすぐれず、令和8年8月千葉豪雨、そして、9月のシルバーウイークを襲った台風25号によって、県内に大きな被害がもたらされました。線状降水帯や台風等の恐ろしさを、身をもって知ることとなりました。
この大きな自然災害により亡くなられた方に哀悼の意を表し、被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げます。また、復興に向けて日々ご尽力されている皆様に感謝申し上げます。
さて、こうした豪雨や地震等の自然災害はいつ発生するかわからず、その発生を止めることはできません。しかし、災害による被害をできるだけ少なくすることは、私たちの努力で可能になります。
それは災害に対する正しい知識や情報をもつことと日ごろからの備え、そして防災の意識です。
富里市は、今回の豪雨で農作物への浸水と道路の冠水及び陥没、土砂崩れの被害がありました。今後もこうした災害が予見されますので、今回は豪雨を含めた風水害や土砂災害にどのように対処していけばよいのかを記します。
正しい知識や情報をもつ
まずは、こうした災害について正しい知識や情報をもつことについてです。公表されているハザードマップや最寄りの避難場所を確認し、家族で共有しておくことが大切です。ハザードマップをもとに、家の周りや通学路、生活上よく使う道路や場所について、危険個所に指定されているところはないかを確認します。また、特に土地の低くなっているところ、川や水路、調整池の場所、土砂崩れが心配されるがけや山はないかを確認し、こうしたところに近づかないこと、これは必ず守ってください。なお、ハザードマップや避難所(指定緊急避難場所、指定避難所、福祉避難所)は市公式ホームページや富里市防災マップで確認できます。
土砂災害にはその前兆となる現象がみられることがあります。崖から濁った水が出ていたり、崖から小石がパラパラと落ちてきたりしたら、要注意です。崖にひびが入っていたり、山や崖がふくらんでいたりした場合も、すぐにそこから離れましょう。
冠水した道路を歩かないようにすることも自分の身を守るうえでは大事なことです。濁った水が道路を覆い隠し、道と田や畑との境、段差や陥没した穴、側溝に足を取られ転倒する事態が想定されます。こうしたことを知識として、また情報として知っておくことが命を守ることにつながります。情報は新しいものほど、効果があります。そういった意味では、テレビやラジオ、インターネットで新しく確かな情報を得るようにしましょう。
学校では、小学5年、中学2年の理科で天気や台風などの災害、天気が変化するシステムや予報の仕方、天気図の見方などを学習します。この学習により天気に関する知識を得ることができるので、自身の災害予防に役立てることができますね。
日ごろからの備え
次に日ごろからの備えについてです。前段で、「冠水した道路を歩かないようにすること」と書きましたが、避難所への移動等、安全確保のため、どうしても冠水した道路を歩かなければならないことはあるでしょう。そのような時は、⻑めの杖や傘、棒などで歩く先を探りながら移動すれば危険回避の役に立つでしょう。いわゆる、ことわざでいうところの「転ばぬ先の杖」ですね。転んだり、足を取られたり、あるいは穴に落ちたりといったことが起こる前に杖を用意するという、具体的な場面から生まれたことわざです。
「いざというとき失敗しないように、前もって用心し備えておくこと」。これが「転ばぬ先の杖」ということわざの意味です。最悪を想定すること。できるだけ失敗や最悪な状況を回避すること。そのために事前の備えを怠りなくすること。先人は、危険回避や備えについて、いましめを含めた多くのことわざを残してくれています。一例をあげますと、「暮れぬ先の提灯」「備えあれば憂いなし」「石橋を叩いて渡る」「念には念を入れる」「後悔先に立たず」「有備無患」(中国の古典から)等々です。
皆さんは、災害に備えてどのような対策をしていますか。風水害に対する備えとして、停電を想定し、電池式のライトや携帯ラジオの準備をしておきましょう。また、断水を想定し、飲料水の確保をするとともに、トイレ用に湯船に水をためておくことも大切な備えですね。
浸水の恐れがある場合は、家電製品や食料品、衣類や寝具などの生活用品をなるべく高いところに移動しておくことも必ずしておきたいことです。
屋外にも目を向けましょう。庭やベランダに飛ばされそうなものは置かないようにしましょう。人や窓ガラス、壁を傷つける原因となります。あわせて、窓ガラスを守るために、雨⼾を閉めたり、外側から板でふさいだりするなどの対策をしましょう。
風水害や土砂災害以外の災害(地震等)に備えて、非常持ち出し品の準備をしておくと、いざというときに慌てずに済みますね。いずれにしてもこうした備えは、児童・生徒の皆さんだけではできないことがありますので、日ごろから防災への備えについて、家族の方としっかり話し合っておくことが大切です。まず、自分の命は自分で守ることを考えた行動をお願いします。
防災の意識
最後に防災の意識についてです。大きな災害に見舞われたにもかかわらず、避難せずに大きな被害にあってしまったり、取り残されてしまったりした人についての報道が数多くされています。豪雨のなか、田や川の様子を見に行って被災された方が多数いたとも伝えられています。危険を知らせる情報や注意喚起、避難指示等が発令されているにもかかわらず、なぜこうしたことが起こるのでしょう。
その原因の一つとされているのが「認知バイアス」です。耳にしたことはありますか?聞きなれず難しく感じますが、意味を知れば心当たりのあることばかりです。
- 認知→(1)情報の受け取り(2)理解(3)判断のプロセス
- バイアス→偏りや歪み 先入観による傾向
- 人が意思決定するときに思い込みや先入観によって合理的でない判断をしてしまう、心理的傾向のこと
認知バイアスといっても、その内容によっていくつかの種類に分けられます。この認知バイアスが、災害時に避難行動に移らないことや避難の遅れにどのようにかかわってくるのか、具体的にみていきましょう。
まず、認知バイアスのうちの正常性バイアスについてです。
正常性バイアスとは、予期しない事態や危機に直面した時「たいしたことない、大丈夫だろう」と過小評価しようとする心理的傾向のことです。もう少し言えば、起きた事態に対して「正常の範囲内」と捉えて、心の平静を保つ働きのことです。
これは誰にでも備わっている心理傾向ですが、なぜこのような仕組みが人間に備わっているのでしょう。実はこれ、脳の省エネ機能といわれているのです。
日常の生活では、さまざまな出来事が起きています。無数の異常にさらされているといってもいいでしょう。例えば、在来線が遅れて、新幹線に間に合わないかもしれないとか、出張先に出向いている途中で、急な豪雨に見舞われるとか、就寝中に大きな物音で目が覚める等々、身に覚えがありますよね。
私は車で通勤していますが、運転中もこうした「ちょっとした異常」はあります。予期せぬ工事や事故による渋滞、道路脇からの動物の飛び出し、緊急車両との遭遇による停車、飛び石等々。これら全てに全力で対処していたら、精神的に持ちません。心が疲れ、いずれパンクしてしまいます。ですから脳は、「いつもの範囲内」と判断して処理コストを下げ、平常心を保てるようにしているのです。これが先ほどお伝えした、脳の省エネ機能なのです。または、心の疲れを防ぐバリア機能なのです。
しかし、心の平静を維持するためになくてはならない心理とはいえ、これがマイナスに働く場合があります。本物の非常事態がきたとき、この省エネ機能、バリア機能が誤作動します。「これもいつもの範囲内だろう」と判断してしまい、そこから回避するという行動が遅れてしまうのです。これが正常性バイアスです。
次のバイアスをみていきます。同調性バイアスです。
これは、集団にいると、つい周りの人と同じ行動をとってしまう心理のことです。例えば(1)会議で決を採るとき多数派に賛同してしまう (2)終業時刻が過ぎているけど、誰も帰らないから残業していこう、といったものです。
この同調性バイアスと、先ほどの「いつもの範囲だろう」「自分は大丈夫」といった正常性バイアスが加わると、危機に気づけないまま、逃げ遅れてしまうことになるのです。
大雨警報が出ても、今までそれほどの被害は出なかったから大丈夫だろう(正常性バイアス)、それにご近所さんは誰も避難していないし(同調性バイアス)。こうして、避難しなかったり、逃げ遅れてしまったりするのです。
最後にもう一つ、確証バイアスについて説明します。
確証バイアスとは、自分がすでに持っている考えや信念、また「〇〇だろう」という仮説を確かなことだと証明してくれそうな情報だけに注目したり、重視したりするという心理的な偏りです。逆に、自分の考えに反する情報を軽視し、目に入っても信用せず、大切なことを見落としてしまう傾向にあるのが確証バイアスなのです。
例えば、豪雨に見舞われても、自分の周囲で大きな被害を受けなかった場合、人はこれくらいなら大丈夫だと思ってしまいます。いったん大丈夫だと思ってしまうと、人はどうしても、自分の考えを支持してくれる証拠を探そうとします。インターネットでも、自分と同じ考えの意見に共感し、同じ考えの内容ばかり検索する人が多く、異なる意見を無視しがちであるということも分かっています。
しかし、今回の台風25 号では、各所で道路が冠水し、床上床下浸水や自動車の水没が多く発生しました。印旛沼の決壊や土砂崩れによる鉄道の運休等、私たちの生活に大きな被害を与えました。これは、台風25 号の影響以前に、何日にもわたって降り続いた雨により、地面の水分量が増加し、この台風による雨水を吸収できなかったためといわれています。台風25 号の雨量だけであったら、ここまでの災害はなかったかもしれません。私たちは、つい台風25 号本体のもたらす雨量や暴風の度合いばかりに目を向け、地面の水分量を無視する傾向にあったか、または、軽視していたのではないでしょうか。
「いままでは大丈夫だった」「昔から言われているから」「あの堤防があるから」といったことを信じ切って(妄信:もうしん)他の情報に耳を傾けないこと、つまり確証バイアスに陥っていることが、被害の未然防止の妨げになっているのです。
ではこうしたバイアスにとらわれず、適切に避難行動をし、命を守るためにはどうしたらよいのでしょう。
まず、認知バイアスには誰にでもあることで、先に挙げた、正常性バイアス、同調性バイアス、確証バイアスに陥り得るということを自覚してください。そして、自分の考えている「あたりまえ」や「自分の中の常識」を疑い、もう一度、本当にそうなのかと考える習慣を身につけてみてください。また、自分の考えと違う人や考えについても、目を背けたり、目にしながら無視をしたりすることないように心がけることが大切なのではないでしょうか。
自分の立場と相手の立場を同じ重さで考えることを意識してください。
令和8年10月
富里市教育委員会教育長 大澤 昌宏
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